薬局をいくつか経験すると、職場の問題点が見えるようになる
転職して手に入るのは、年収や役職だけではありません。
こんにちは。薬局薬剤師のとんぷくです。薬剤師歴19年、転職は4回、管理薬剤師は通算10年やってきました。
複数の薬局を見ると、「比べる目」が手に入ります。
理由は、1つの職場しか知らないと、そこのやり方が世界の標準になるからです。
比べる対象がないので、良いところも悪いところも見えません。
これは転職の目的として語られることがほとんどありませんが、実務でいちばん大きかった変化です。
迷ったらここから
1つの職場しか知らないと、比べられない

ずっと同じ環境にいると、感覚が麻痺してきます。
「うちはこういうやり方だから」で全部が説明できてしまう。
それが良いのか悪いのかを判断する材料が、自分の中にないからです。
僕は新卒で入った門前薬局で、調剤台の配置に一度も疑問を持ちませんでした。
不便だと思ったこともありません。
そういうものだと思っていたからです。
2軒目に移って、初めて「前の店は動線が悪かった」と分かりました。
比べて初めて、問題が問題として見えました。
気づくのは、たいてい小さなこと

薬局を移って気づくのは、制度の話ではありません。
もっと地味なことです。
- 調剤トレイをどこに置くか
- 印鑑をどこまで押すか。そもそも要るのか
- 一包化や散剤の、分包紙の折り方
- 在庫の並べ方(メーカー順か、五十音順か、棚番号か)
- 朝礼をやるか、やらないか
1つずつはどうでもいいことに見えます。
でも、これが1日に何十回も発生します。
小さな違いの積み重ねが、その日の疲れ方を決めています。
やり方の違う店を2つ知っているだけで、どちらが自分に合っているかが分かるようになります。
見えるようになると、提案できる

比べる目ができると、次の段階に進みます。
「こうすればもっと楽になる」が言えるようになります。
僕は移った先で、前の店で見たやり方を持ち込んで提案したことがあります。
実際にやってみて業務が軽くなったので、そこから社内での見られ方が変わりました。
これは意外な副産物でした。
転職が、社内での評価を上げる材料になるとは思っていなかったからです。
ずっと同じ職場にいる人は、比べる材料を持っていません。
だから提案が出てこない。
複数の店を見た人にしか言えないことがあるということです。
ただし「前の職場では」は嫌われる

ここは注意が要ります。
同じ内容でも、言い方ひとつで受け取られ方がまったく違います。
| 嫌われる言い方 | 通る言い方 |
|---|---|
| 前の職場ではこうでした | この作業、◯◯すると早くなりませんか |
| そのやり方は非効率です | なぜこの順番なんでしたっけ |
| うちのやり方が正しいので | 試しに1週間やってみてもいいですか |
右の列は、どれも前の職場を持ち出していません。
受け入れる側に回ってみると分かるのですが、「前の職場では」で始まる話は、内容以前に構えられます。
うちのやり方を否定された、と聞こえるからです。
僕自身、管理薬剤師として何度もこれを受けました。
提案の中身は正しくても、順番を間違えると通りません。
入ったばかりの職場での動き方は新しい職場の最初の3ヶ月にやったことに書きました。
転職は、逃げではなく目を作る行為

薬剤師には、転職経験の少ない人が多い印象があります。
エージェントを使ったことがない人も、意外といます。
転職に罪悪感を持つ人も多いです。
逃げたと思われるのではないか、続かない人だと見られるのではないか。
僕は4回転職して、はっきりそうではないと思っています。
動くたびに、判断の材料が増えました。
- 何が普通で、何がその店だけのやり方なのか
- 自分がどの環境で働きやすいのか
- 何がしんどくて、何は耐えられるのか
これは、外に出ないと手に入りません。
同じ場所で10年続けても、比べる材料は増えないからです。
もちろん、回数を重ねればいいという話でもありません。
転職回数がどう見られるかは転職回数が多い薬剤師は不利なのかに書きました。
まずは2〜3社を比べてみる
まとめ

複数の薬局を経験することについて、押さえておくことは次の5点です。
- 転職で手に入るのは年収や役職だけでなく、比べる目です
- 1つの職場しか知らないと、そこのやり方が標準になり、問題が見えません
- 気づくのは制度ではなく、動線・印鑑・分包紙の折り方のような小さなこと
- 比べる目ができると提案ができ、社内での見られ方まで変わります
- ただし「前の職場では」で切り出さない。内容以前に構えられます
いま働きにくいと感じているなら、それは能力の問題ではなく、その店のやり方が自分に合っていないだけかもしれません。
それを判断するには、比べる材料が要ります。
薬局の型による違いは門前・面・在宅特化・敷地内に、規模による違いは薬剤師2人の店と、10人の店にまとめました。
それでは、また。
